'06北陸新幹線高岡駅周辺まちづくり研究会報告

- 第2回北陸新幹線高岡駅周辺まちづくり研究会 -

高岡南部地域活性化協議会

日時  平成18年7月4日18:00〜
場所  ホテルニューオータニ高岡


新幹線駅周辺整備研究会鼎談

 
 

第1部
講演  「高岡のまちで−よもやま話」−現駅と新駅を生かしたまちづくり
講師  前高岡市長、佐藤孝志氏

佐藤前市長

要旨 
一昨年5月まで16年間、市長を務めさせていただいた。昭和63年5月に就任したとき、4つの課題があった。一つは市職員の数が大変多いことで、全国類似都市ではトップだった。どうやってスリム化し、同時に市民奉仕の意識を高めるかという行革が求められた。結局16年間で職員を4分の1減らした。

二つ目は総合斎場の問題である。そのときすでに20年ぐらい経っていたが、いまだに解決できておらず、申し訳なく思う。三つ目は街の活性化。難航していたオタヤ再開発に続き、駅前再開発も完成した。街というものは、住んでいる人、外から来た人にとって「希望と魅力にあふれている」ことが重要だ。

そして四つ目が北陸新幹線高岡駅の位置。昭和57年に当時の市長と市議会議長が「現駅の南1.5キロに」と要望し、昭和60年に認可申請されたという経緯がある。ところが、私が就任したら「市長も替わったことだし、これまでの計画は白紙にして現駅併設をすべき」という声が上がった。

これは大変な問題だったが、市長に就任して3カ後に新幹線計画は大きく舵を切ってスーパー特急やミニ新幹線というものが出てきた。「ウナギを頼んだらドジョウやアナゴが出てきた」と批判される計画変更である。とはいえ、北陸新幹線はスーパー特急方式となり、在来線も活用する案だったため現駅乗り入れが当然となり、駅問題はひとまず落ち着いた。

しかし、平成6年に基本スキームの見直しがあり、フル規格での建設が決まり、駅問題が再燃した。計画は分離駅で進んでいるため、現駅乗り入れについてはひそかに可能性を探った。その結果、技術的には乗り入れが可能と出たが、工事費が1850億円と、新駅で建設する場合に比べ550億円も増えること、さらに家屋移転などで工期が延びるなどの結論が出た。

中沖前知事さんは、「現駅併設を打ち出すと高岡は蜂の巣をつついたようになる。それは受け入れられない」という。これでは県の協力も得られないし、「もめている高岡のせいで新幹線計画が遅れる」「新駅より余分に架かる経費を市で負担しろ」と言われかねない。そこで、高岡市としては新駅で統一見解を出したうえで、二つの核を持つことになっても市勢が衰退しないように県と文書を交わした。

高岡新世紀プランでは、この二つの駅周辺をあたかも一つのゾーンとしてとらえている。現駅は橋上駅として駅部分が上に、ホームは下にある構造で南北自由通路を設ける。さらに氷見線・城端線を直通化するほか、新幹線新駅に城端線対応駅(アクセス駅)を設置することも課題としている。

まちづくりは「芸術性、劇場性」がないとダメだ。これは1900年に亡くなったルイス・マンフォードの「都市の文化」に出てくる言葉から取った。駅やコミュニティセンターのようなパブリックと、プライベートの建物とを総合的に芸術作品として造るのが都市であるという考え方だ。市民、企業が行政と一緒になって機能よくつくっていき、文化的、精神的なニーズを満たす舞台が都市とも言える。

橘市長は現駅を「通勤・通学のターミナル」新駅を「観光・ビジネスの玄関口」と言っている。新しい都心軸と一体化して、競争しながら共存する方法を取るべきだろう。両駅間の土地利用は魅力ある企業、商店などを全国公募して、進出奨励金などを支給すべきだろう。

かつて、?山元高岡短大学長はストリートネーミングを打ち出した。「駅南大通り」「前田通り」などだ。これで誰も使わない道路名称から親しみのあるものになった。こうした手法は評価すべきだ。また、地域起こしで成功している湯布院、長浜、小布施などへ行ったが、こうしたところは市役所職員ではなく、市民が一生懸命にやっている。こうしたことも、申し添えておきたい。

 

第2部
プレゼンテーション 「高岡アイデンティティ・現駅−新駅1.5k区間対象に」
講師  富山大学芸術文化学部長、前田一樹氏

前田学部長

要旨 
高岡に来て6年目。まだ知らないところも多い。その中で、考えたことを紹介したい。テーマを「10/20/30年後に向けて TAKAOKA IDENTITY」とした。具体的には「里山文化を守り、飛越能の玄関口としてどういう新価値を創造するか」である。

私は出身が大阪で、こちらに来るまでは高岡を知らなかった。そうした環境のなかで、世界が訪れてみたい高岡とするには、恵まれた自然・芸術文化の継承と創造を果たして、街自体を商品とする考え方が必要だ。これまでは「工芸都市」を標榜していたが、これからは一歩進んで「芸術文化都市」の宣言をすることが必要だ。

 高岡ワールドをつくるには、3つのキーワードがある。一つは「ドラマ」、二つ目は「クリエイティブ」、もう一つが「グリーン」だ。まず、ドラマは飛越能を時間的、歴史的、技術的、国際的、食育的、医学的など各分野別、切り口別にネットワーク化する。それを企業サイドから見るのではなく、ユーザーサイドから考えていき、ICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)で実現していく。そのうえで、「守る伝統+創る夢」として、市民が演者のドラマシティーを目指す。たとえば、瑞龍寺はニューヨークの近代美術館と遜色はない。高岡はいいドラマを持っているのだ。

 次にクリエイティブシティーである。便利さと不便さに新たな価値観を創造しなくてはならない。便利さだけを追求すれば全国どこも同じになってしまう。実は不便さにこそ楽しい魅力があり、それがクリエイティブにつながる。

八丁道では軒先に梵鐘や火箸の風鈴を下げる。街中の店では漆器を使い、漆器のよさを味わう。高岡は銅器や漆器が有名と言いながら、それが見えない。だから具体的に「見せる仕組み」が大切だ。特に女性が楽しめる提案が街中にあることが重要だ。匠がいる町、伝統・芸術文化が息づくことがクリエイティブにつながる。「京都と奈良」を「金沢と高岡」に当てはめてみたい。高岡は侘び寂びの奈良と似ている。つまり味わい深い街なのだ。灯篭に明かりを入れるだけでアートである。

最後にグリーンシティーである。環境保護とサスティナブル(継続的)な社会と文化の継承を目指す。紙をリサイクルし、お菓子を包むのに「菓紙」、寿司には「寿紙」などを考えた。「高岡紙」というのも作れないか考えている。

北陸新幹線新高岡駅のコンセプトだが、「見えない駅」というのはどうか。これは「見栄ない駅」でもある。たとえばアメリカでは駅の周りに木が生えているだけの駅があるが、こうした景観も考えていいのではないか。新駅の周りに植林して森をつくる。同時に現駅は機能的にする。オールド・ニュー・ステーション メタル&ジャパニーズミュージアムとして、世界中の金属を集めて展示する駅である。これなどは世界からは魅力的に映るだろう。

観光客にとって楽しいことは、「見る」「買う」「遊ぶ」「話す」だ。「見る」は、どう見せるか。つまりこれまでのフロントだけから、バックヤードも見せる。裏側が見えるとか現場の空気感とかが喜びになる。「買う」で言うと、USJでは各アトラクション出口にショップがある。つまり感動が冷めたら購買欲が下がるからだ。「遊ぶ」は、見るよりもする、参加したい。そんな需要を満たすことを考えるべきだ。「話す」は、物の背景にある話題がお土産になるということだ。食べ物でもうまいことより、うんちくが最新情報となる。意外性を盛り込むことが大事だ。

県外の人にとっては、高山も高岡も長岡も区別がつかない。ごっちゃになっている。同じように利家を知っていても利長は知らない。だから広報戦略が必要だ。

 

第3部
鼎談  佐藤孝志氏、前田一樹氏、司会 松原吉隆・高岡南部地域活性化協議会副会長

松原副会長

要旨 
松原 佐藤前市長、前田先生のお話には共通点が感じられた。希望と魅力ある都市と芸術・文化都市はどちらもLOHAS(健康と環境に配慮した生活スタイル)シティーに通じる。それぞれ、感想を伺いたい。

前田 佐藤前市長の話で意を強くした。?山学長の名前ストリートや新幹線高岡駅をどこに置くかといった問題があることは知らなかった。私は単純に現駅と新駅が違うほうがいいと思っている。何もないところに駅が生まれるから、日本にはない駅が出来る可能性がある。木を植え、30年、50年先に大きな森になる。駅がひとつの散居村の家のようなものだ。これが見えない駅という考え方でもある。

佐藤 前田先生のお話は何度か聞いたが、まとまって伺ったのは初めてで、全くもっともだと思った。外から見られた目で大きなインパクトを与えていただいている。その力を高岡の魅力化に発揮していただきたい。先ほどのパワーポイントの資料を参考というのでなく生かしていってほしい。大変よかった。

松原 北陸新幹線高岡駅の周辺整備を考えるとき、万葉線やJR氷見線、城端線という既存の公共交通をどう活用したらいいかという問題がある。

前田 大それたことは言えないが、万葉線は赤の車体が走っていて気分がすごく変わる。雪のとき、春の新芽のとき、四季折々に赤の電車が高岡の街並みに映える。駅間距離が短いのもいい。フランス製で最高速度90キロほどの車に乗っているが、この遅い車だと今まで見えなかったものがいっぱい見えてくる。同じように新幹線のスピードで来て、街に下りたらゆったりと見えるのがいい。万葉線はループになったらなおいい。

佐藤 万葉線は?山先生がいらっしゃらなかったら、存続していなかったと思う。廃線にするのは簡単だが、貴重な文化資産として残すべきと主張された。市民が株主となって活用するように、発想の転換が必要だと自ら夏休み返上でレポートを作って、人々を動かした。アイトラムの赤色のデザインは、あえてあんな色になったと思う。路線を増やすのは現実的にはなかなか難しいが、新幹線駅側にもあればいい。現駅は高架にならないため、氷見線と結びつけるのも難しいが、どこかで乗り入れることができないものだろうか。もちろん、氷見線、城端線はディーゼルだから、電化しなくてはならないのが問題だが−。

松原 飛越能の玄関口としての新幹線駅、地域の駅である現駅。二つのモールを文化ゾーンとして魅力あるまちづくりにつなげなくてはならない。

佐藤 飛越能の玄関口というが、放っておいてはできない。レンタカーで能登へ行くとか、いろいろ便宜を図らなくてはならない。市内は自転車で瑞龍寺、前田墓所、金屋町などへ行く方法もある。加越能バスと競合しない形で、100円でどこでも行けるなどの方法も考えないといけない。

前田 高岡にはいろいろなものが混在・点在している。しかし、近視眼的にならずに「外側」を考えることも重要だ。富山県内でも新黒部、富山駅はどんな役割を果たすのか考えてから高岡を考える。飛越能全体をよく考える必要がある。

松原 万葉線の存続は大きなドラマだったと思う。富山県はLRT王国であり、全国に誇れる文化がある。少子高齢化、人口減少時代にあって、魅力あるまちづくりを今後も考えていきたい。